新天地

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そんなハラハラなピザ屋のバイトではあったが、前田さんは教える事はキチンと教えてくれる面倒見のいい先輩でもあった。 前田さん以外にもクセがあったり気性の激しい人達は多かったのだが、オレが唯一の高校生ドライバーだったからなのか・・・ 階級が奴隷(笑)のオレにみんな優しくしてくれた。 そして数ヵ月経つ頃には前田さんに、やたら気に入られる事となる。 前田さんと歳は8~9才程離れてはいるのだが、それでも良くメシに連れて行ってもらったりした。 ただ前田さんと仲良くしてもらうキッカケというか、ひとつの事件があった。 まぁ、このピザ屋からしてみれば、取るに足らない事件だろうが・・・ 「稲本ぉ、これ作ったのお前だろ?何だよこの伸ばし方は!」 ある時、山口さんという2才年上のドライバー仲間に、若干怒り気味に話しかけられた。 見れば、山口さんは鉄板の上で伸ばされたピザ生地を持っている。 ドライバーは時間が空いてる時に、ピザ生地を伸ばして鉄板に並べておくのも仕事のひとつだった。 「え?いや、それはオレじゃないっすよ」 この日オレはピザ生地にはまだ触れてすらいない。 なのでありのままに返事をした。
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