新天地

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「ウソつけよ!こんな商品にもならねえような伸ばし方すんの稲本しか居ねえだろうが!」 全く身に覚えのない事を言われて、この時点でオレは少しイラッとした。 だが相手は仕事の先輩・・・ 我慢する事も必要だ。 「だから、オレは本当にまだやってないんですって。本当ですよ」 この山口という男、オレは元々かなり嫌いな先輩だった。 自分のミスを人に押し付けるのは日常茶飯事だし、普段から口では大きな事を言っても行動が伴わない。 さらに仕事も適当で、ムリヤリな理由を作っては自分より下の立場の人間にたかろうとする。 細かい事を言えば、ピザ生地の作成だって入って間もないオレより全然イイ加減な出来映えだった。 そのクセ、上の立場には調子良く媚びる性格でもあったので、オレだけでなく何人かの同僚にも毛嫌いされている。 「言い訳なんかいらねぇんだよ!お前、罰として今日の俺の担当地区のポスティングもやっとけや」 ポスティングとは簡単に言えば一軒一軒回ってポストにチラシを投函していく業務である。 大体一回のポスティング目安が2時間で200軒から300軒だ。 ちなみにこの業務はかなり面倒なため、ピザ配達に比べて誰もが嫌がる。
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