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「一週間前……」
不意に少女は何かを思い出したように、病室を飛び出した。
そして、ある場所に向かって走り出す。
そしてあるドアの前にたどり着いた。
昨日も来たはずの場所だ。
少女は軽くノックをすると、中からの返事も待たずにドアを開けた。
中には少年が一人、なにをするのでもなく窓の外を眺めている。
しかしドアの音に気がついたのか、すぐに少女の方へ目を向けた。
「おはよう」
少年は焦っている少女に対して、普段と変わらない無表情な顔で挨拶んする。
「……おはよう」
少女も少年を真っ直ぐ見つめて挨拶をすると、近づいていった。
「どうかした?」
「君が事故にあった理由が気になって……一週間前の」
少女がそうゆっくり言うと、少年はあぁと言って話しはじめる。
「その日、俺は親父と一緒にここに車で向かってたんだ」
「ここに?」
「あぁ、俺のお袋がさ……病気でもう一年ぐらい此処に入院してたんだ。でも、その日急に悪化してさ」
「…………」
「病院から、危篤みたいな電話掛かってきたから大急ぎで向かったんだ」
「…………」
少女は何かを考えながら、少年の話しを黙って聞いている。
「俺の親父、すげぇ馬鹿みたいに焦ってて……交差点の信号つい無視したんだ。そしたら、別の車が前に出てきて、ぶつかったってわけ」
「…………」
「…………」
そこまで喋ると、少年は黙り込んだ。
少しの沈黙が生まれる。
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