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「お医者……様?」
少女は不安げに見つめる。
「君達家族は、事故にあったんだよ?覚えていないかい??」
そういわれると、少女の顔は一気に青ざめる。
何やら思い出したようだ。
「君達は車で走っていた時、交差点で信号を無視してきた車と衝突したんだよ……」
医者は深刻そうな顔で、事故の経緯を話しはじめる。
「…………お父様…お母様は? なんでいないの??」
少女は今はそんな事よりも、二人の安否の方が気になるようだ。
「…………」
医者はその問いには中々答えてくれない。
二人の間に沈黙が流れ、ただただ時計の秒針が時を刻む音だけが聞こえる。
「君のお父さんは……亡くなった」
「え……なに?」
医者の重い声も、心が拒否しているのか少女の耳に届かない。
「接触したのが、運転席側だったんだ。だから……」
「うるさいっ!!」
医者の言葉に蓋をするように、少女は耳を塞ぐ。
まるで駄々をこねているみたいだ。
「聞きなさい。君は事実を受け止めなくちゃいけないんだ」
最初は強く、次の言葉は諭すように医者は話す。
「……なんで?本当はピクニック行って、三人で仲良く…………そうだ、お母様は?お母様も死んじゃったの!?」
頭を抱えていた少女は、さらに地獄に落とされそうな顔で医者に飛びついた。
その時に管が何本か抜けるが、それどころでは無いようだ。
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