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「君のお母さんは、今意識不明の重症で集中治療室にいる」
「意識……不明?」
ということはまだ生きているのかと、胸を撫で下ろした。
「君は、あと数日の間入院したら帰れるよ」
そう、医者は優しく言う。
「お母さんはいつ退院できるの??」
しかし、この質問でまた難しそうな顔に戻ってしまった。
「君のお母さんは……いつ意識が戻るか分からない」
そして、重々しい声が白い箱の中に響いた。
「え…………」
その言葉に、退院できるなどという喜びは失せてしまったようで、少女はその大きな目を限界まで見開いて医者を見つめた。
「事故の時外傷はなかったが、頭を強打していたようで……」
医者がその理由を説明し始める。
少女は呆然と、医者にしがみついたまま動かない。
「…………なんで……こんなことになったの? わた……私がピクニックなんて行きたいって言ったから……?」
そして今まで出なかった涙が一筋、頬を撫でた。
そこからは、とめどなく涙が少女の目から流れる。まるでこの現実をすべて流そうとしているみたいに。
でも流れる事は無く、涙は永遠と止まらないかのように流れ続けた。
そして少女は、そのまま疲れて眠ってしまう。
医者はそんな少女を壊れ物を扱うようにそっと抱き上げ、ベッドに寝かせる。
「…………済まない」
そしてぽつりと言葉を零すと、病室を去って行った。
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