二人の国

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「ありがとう」 少女は警戒心を解いたのか、少し笑うとトイレに入って行った。 少年は入口から少し離れた所に立ち、少女が出てくるのを待っている。 「えっと……お待たせ」 モノの数十秒で少女はトイレから出てきた。少年はそれを見ると満足したように頷いた。 「君、こんな時間に何してたの??」 少女は一番気になっていた質問をする。 「眠れないから、病院の中探検してた」 「眠れないんだ、私と一緒だね」 少女は歳の近い子に出会えたのが嬉しいのか、少し笑顔になった。 「お前も眠れないのか?」 少年は不思議そうに少女を見つめてから、急にに少女の手を掴んで引っ張る。 「どっ何処行くの??」 「俺の病室。ここは冷えるから」 そう言った少年はちっとも寒そうに見えない。 だが、少女の体が微かに震えていたのに気がついていたみたいだ。 「…………ありがとう」 少女も気がついたのか、小さな声でお礼を述べた。 「ここ」 そして、一つの扉の前で立ち止まった。 そこは丁度トイレを挟んで、少女の部屋の反対側ぐらいだ。 「入れば??」 少年は無表情で、扉をあける。 そういえば、ほとんど表情が変わらない子だな と少女は一人思いながら、開けてもらった扉の中へ入る。 中は少女の病室と対して変わらないものだった。 長く入院してるようには見えない。 「ねぇ、いつからこの病院にいるの??」 「一週間ぐらいまえ」 その言葉に、少女は少年の方が長く入院してるのかと思い込む。 「なんで入院してるの?病気??」 そう聞かれると、少年は少し困ったような顔をした。 「事故にあって、ここに運ばれたんだ」 「事故!?」 その言葉に、少女は食いついた。
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