沈黙

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「お母さん、智基が学校の授業に遅れてしまうのが心配なの。わかるでしょ。智基はいま五年生なのよ。中学受験だって考えていかなくちゃいけない、大事な時期なの」 「……そうだね」 さっきよりもさらに勢いを落とした声で返事をした。 沙代子の小言に耳を傾ける気にはなれなかった。 ただただ、この窮屈で憂鬱な瞬間から解放されることを望んだ。 そのためには、余計な反論は一切せずに黙っているのが最善だと知っていた。
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