石矢魔球技大会

3/7

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「え?男鹿先輩、そのバットでなにするつもりだったんスか?」 「いや、お前を冥王星辺りまでぶっ飛ばそうかと。」 「止めて下さい!いくら僕の立ち位置がはっきりして無くて面倒臭いからって、飛ばすなんて……」 「で?」 夏目の後ろから、これまたジャージの似合わない姫川が現れた。 姫川は札束を取り出し(全部千円札だ)山村の頬を叩いた。 「これで引っ込んでくれる?」 「わかりました!」 山村は全速力で体育館から出た。 「……切り替えはえーな…」 「ところで…男鹿」 古市が尋ねる。 「なんだ?」 「アレ…いいの?」 古市の指差した先には、石矢魔最強の男、東城がいた。……そしてその背中には、寝ぼけたベル坊がぶら下がっている。 「おい、今何メートルだ!?」 「ざっと14メートル。」 古市がサラッと言った瞬間、男鹿は飛び出した。 「てめっ…ベル坊!!いい加減俺から離れんな!!……ガハっ!!」 男鹿に飛んできたサッカーボールが当たった。 東城は無言で、運動場に迷い込んだ猫(ギリギリ見えるぐらい遠い)に向かっている。しかも早足だ。 「東城、待てこら!!」 だが、1メートル先の音も聞こえないほど、周りは騒がしい。聞こえる筈がない。 東城はこちらの事など気にも止めず、体育館入り口を目指す。 「やめろー!!………!」 入り口に、あの女がいた。 「あ…れ?」 急にベル坊が目覚め、邦枝に抱きついた。 「ダ…ダー!」 ベル坊が目をキラキラと輝かせている。 「む?この赤ん坊…確か男鹿の…」 ベル坊が離れて、東城もようやく気付いた。 「危なかった!!」 頭にバドミントンの羽を付けた男鹿が、邦枝に駆け寄る。 「いやー、やっぱり懐いてるじゃん!お前、母親になれよ!」 「な…ならないわよ!!」 邦枝がベル坊を突き返した。 「男鹿辰巳。球技大会ぐらい、赤ん坊を置いてこい。」 「いや…こいつすっげー寂しがりやでさ…」 適当にごまかしながら、男鹿は古市の所に戻った。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加