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「え?男鹿先輩、そのバットでなにするつもりだったんスか?」
「いや、お前を冥王星辺りまでぶっ飛ばそうかと。」
「止めて下さい!いくら僕の立ち位置がはっきりして無くて面倒臭いからって、飛ばすなんて……」
「で?」
夏目の後ろから、これまたジャージの似合わない姫川が現れた。
姫川は札束を取り出し(全部千円札だ)山村の頬を叩いた。
「これで引っ込んでくれる?」
「わかりました!」
山村は全速力で体育館から出た。
「……切り替えはえーな…」
「ところで…男鹿」
古市が尋ねる。
「なんだ?」
「アレ…いいの?」
古市の指差した先には、石矢魔最強の男、東城がいた。……そしてその背中には、寝ぼけたベル坊がぶら下がっている。
「おい、今何メートルだ!?」
「ざっと14メートル。」
古市がサラッと言った瞬間、男鹿は飛び出した。
「てめっ…ベル坊!!いい加減俺から離れんな!!……ガハっ!!」
男鹿に飛んできたサッカーボールが当たった。
東城は無言で、運動場に迷い込んだ猫(ギリギリ見えるぐらい遠い)に向かっている。しかも早足だ。
「東城、待てこら!!」
だが、1メートル先の音も聞こえないほど、周りは騒がしい。聞こえる筈がない。
東城はこちらの事など気にも止めず、体育館入り口を目指す。
「やめろー!!………!」
入り口に、あの女がいた。
「あ…れ?」
急にベル坊が目覚め、邦枝に抱きついた。
「ダ…ダー!」
ベル坊が目をキラキラと輝かせている。
「む?この赤ん坊…確か男鹿の…」
ベル坊が離れて、東城もようやく気付いた。
「危なかった!!」
頭にバドミントンの羽を付けた男鹿が、邦枝に駆け寄る。
「いやー、やっぱり懐いてるじゃん!お前、母親になれよ!」
「な…ならないわよ!!」
邦枝がベル坊を突き返した。
「男鹿辰巳。球技大会ぐらい、赤ん坊を置いてこい。」
「いや…こいつすっげー寂しがりやでさ…」
適当にごまかしながら、男鹿は古市の所に戻った。
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