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……いや、そりゃあマトモにできるとは思ってなかったけどさあ…まさかここまで…
「どした?何をブツブツ言ってるんだ?」
「いや、なんでも…」
合計15分以内に、どれだけ点を取れるか、というルールの試合。
只今、残り5分。
50:5……驚く無かれ、現実だ。
古市の目にはバッカバッカと点を取る、男鹿と東城しか見えなかった。姫川と神崎は完璧にこぼれ球を拾う。邦枝は超的確なサーブを打つ。
古市はただ呆然と見ているだけだった。
(この人外たちが…!)
真面目な話、古市は一歩も動いてない。
そうこう考えているうちにあと1分。点差は相手にとって絶望的だった。
(はあ……俺、夏目さんと変われば良かったかも)
そうやってボーっと考えていた古市に、隣のコートからボールが飛んできた。
真っ先に気付いたのは男鹿だった。
「…バカ!なに突っ立ってるんだ!」
男鹿は古市に体当たりしようとした。
だが、間に合わなかった。
「ぐぉっ!?」
古市の後頭部にボールがぶつかり、派手な音を立てながらうつ伏せに倒れた。
次に気付いたのは邦枝だった。
「審判!タイムよ!」
夏目は慌てて笛を吹き、試合を止める。
「おい!大丈夫か?」
男鹿は古市を揺り動かす。
「う……」
意識はある。
男鹿が叫んだ。
「城山!山村!」
「はい!」 「呼び捨てか!?」
「お前たちはこっちのコートに入れ!俺は古市を保健室に連れて行く!」
男鹿は古市を抱きかかえ、引き留めるみんなの声を聞きもせず、全速力で体育館を出た。
夏目はその光景を見ながら呟いた。
「………愛…だねぇ…」
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