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「こ、こわいよ健ちゃん……」
ザーっという滝の所為で僕のそんな声は音に飲み込まれてしまった。
健ちゃんは、下から僕を呼んでいる。そんな僕はというと、とっても高いところで足が震えていた。
そう、僕は今滝の上にいるんだ。
なんでここにいるのかというと……。
二時間前
「あーあ、せっかくばあちゃんの家に来たってのに、母ちゃんは大人たちとしゃべってるし、父ちゃんは仕事があるって言って、どっか行っちまうし。こんな田舎じゃ遊ぶとこなんてどこもないっつーの!」
健ちゃんは腕を頭の後ろに回して、退屈そうに言う。
「健ちゃん。母ちゃんも父ちゃんも、いそがしいんだから仕方ないよ。僕らは言われたとおりにどっかで遊んでようよ」
「はあーあ。だからよ、健坊。こんな田舎じゃ遊ぶとこなんてどこもないんだって!」
大きく溜息をついて、健ちゃんに言い返された。
僕の名前は健坊……じゃなくて健二。健ちゃんっていうのも本名じゃなくて、健太っていう名前。
健ちゃんは僕のお兄さんで、僕は健ちゃんの弟。
いつ、誰がそう呼んだのかわからないけど、いつの間にか僕たちもそう呼び合っていた。
「んー、なんかおもしれえこと、ねえかなー」
健ちゃんはいつもこんな感じで、僕たちの住んでいるところではいつもゲームセンターに通ってた。でも、今はおばあちゃんの家にきてるからゲームセンターなんて周りには無かった。
「んー……。ん?なんか聞こえないか?」
ふっ、と健ちゃんが耳をかたむける。僕もそれにならって周りの音をよく聞いてみた。
……ザーっと、小さく聞こえる。
「……たしかに何か聞こえるね」
「いってみようぜ!」
目を輝かせて言ってきた。僕は、それに賛成した。……のが間違いだった。
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