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そうして、今、僕は滝の上にいる。
滝の下には大きな白い箱があって、健ちゃんは「あれなんだ!」って言って、飛び込んでいってから僕を待っている。
そんな僕は足がふるえて、健ちゃんのところに行けない。
「おーい健坊!はやくおりてこいよー!これあけてみようぜー!」
「……でも、こわいんだよぉ」
僕はいつもこうだ。
小学校の体育でも、なにもできなくて。休み時間だって、健ちゃんにドッヂボールやろうってさそわれても、僕は行かないで教室で本を読んで。
いつも何もしないで。
夜、トイレに行くのもこわくて。だれかをいつも起こして。
今回も、だめなんだ。
こわくて、こわくて。もう、くじけてる。
「け、健ちゃん、僕、さきに」
帰ってるね、って言いたかった。ううん、心の中では言ってた。
でも、それにかぶさるような感じで。
「健坊!ここで飛ばなきゃ変われないぞ!ダイブだ!」
……健ちゃんには、お兄ちゃんには、やっぱり負けるな。
「ダイブだ!健坊!」
そう、勇気をだして、
「「ダイブ!」」
その日、僕は一つ、大人になった気がした。
「あ、なんだよこれ!冷蔵庫じゃんか!しかも中身入ってねーし!」
「あはは、健ちゃん、何があるとおもったの?」
「そ、そりゃおまえ、宝とかさ!……はあ、かえるぞー」
僕にとってこの冷蔵庫は、思い出の宝物になったよ、健ちゃん。
「ん?なんかいったかー?」
「なんでもー」
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