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―――「そうか、この街は今祭の準備をしているのか。」
シルクハットをテーブルに置き、窓から映る景色に視線を散らばせる紳士。
ローブ姿は椅子に座り、ただじっとしている。まるで人形の様にピタリと動かずに。
「マイ、スター。少し祭を楽しもうか。君には休息が必要だろう？」
ローブ姿はこくりとも頷かず、彼の話をゆっくりと聞いていた。
―――「じゃあ、準備を手伝ってくるね！また夜に遊びましょ！」
「慌てて骨組みを崩しちゃダメだよ、ミーリル。君は慌てんぼうだから。」
クスクスと少女を見送り、フェアリーはお気に入りの草の上で昼寝を始めた。
まどろみの中、祭を楽しむ心の無い自分の心に語りかけながら、フェアリーは夢を見ない程の眠りについた。
「ばあちゃん！行ってきます！安心して、ちゃんと足元は見るわ！」
家の前でうつらうつらとひなたぼっこをしていた老婆はにんまりと笑う。
―――宿の一室を後にした二人は、主人に挨拶がてら訪ねた。
「何やら街が忙しない様子ですが、祭でもあるのかな？」
「あぁ、ここカシミアでは明後日の桜竜の日に合わせて毎年、春を迎える祭を開くんです。なに、田舎街の小さな宴さ。」
酒だけはタダだよ、と付け加えて主人は売上の計算を再開する。
「そうか、もう春か。成る程寒さが段々薄れている訳だ。サンキュー、ミスター。」
笑顔を向けた紳士は扉を開けた。まだ肌寒さの残る外気に触れに。
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