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宗教と呼ばれた画一的幸福を願う信仰は、機械が産み出す物質的幸福に取って代わり、捨て去られた。
己自身を内面から見つめ正す哲学という自己鍛練は、肉体の安息と快楽を絶えなく得られ、堕落に溺れるようになって廃れた。
機械文明の恩寵を最大限に享受した人々は、考えることを止め、誰の言葉も聞かない。
問うものに耳を貸さず、問うものも諦めている。
己の欲望を満たすために目先の恩恵に手を伸ばし、信じるものは無機質な物質だけであった。
今現在の逸楽を貪り、未来を見据えることなど眼中にない。
昨日の出来事すら覚えることを止めた人に、歴史を顧みるなど求めるべくもないだろう。
個人が自己の欲望の内に閉じ籠り、やがて、それは世界の閉塞にまで波及した。
閉ざされた世界が赴くのは破滅だけである。
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