男鹿と古市の夏祭り

3/12

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「オラ!古市のバカやろう!!おせえんだ…よ…?」 アランドロンだった。 「うっ…うっ…酷いですぞ!男鹿どの!」 しなを作って泣いている姿は、吐き気を催してもおかしくなかった。 「な…なんでお前が!」 「古市どのが中々起きないので…わたくしが着替えさせて連れてきました。」 パカッとアランドロンが二つに割れる。 「寝てねえよ!!こいつが俺に着物を着せたがって……家族の誤解を解くのに、どんだけ必死だったか…!」 中から古市が出てきた。 浴衣姿を見ていると、シルエットだけなら女にみえそうだ。 「………随分可愛いじゃねえか」 「は、はあ!?馬鹿言うなよ!?」 しかし、薄いピンクの浴衣は、どう見ても可愛い。 「従姉妹のお下がりだから仕方ないだろ!」 「……ま、いいや。行くぞ。」 「ダー!」 「わたくしも……」 アランドロンがいそいそとハッピに着替える。どう考えても違う。 「留守番ね。」 男鹿が玄関にアランドロンを蹴り込む。 「じゃ、行こうか古市君。」 神社の方角からお囃子が聞こえる。 微かに綿菓子か何かの甘い匂いが漂ってくる。 道路には、夕日で二人の長い影が射していた。 ………その影の先端に、これまた浴衣の為に生まれて来たかのような美人が、電柱に隠れて後を付けていた……
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加