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「オラ!古市のバカやろう!!おせえんだ…よ…?」
アランドロンだった。
「うっ…うっ…酷いですぞ!男鹿どの!」
しなを作って泣いている姿は、吐き気を催してもおかしくなかった。
「な…なんでお前が!」
「古市どのが中々起きないので…わたくしが着替えさせて連れてきました。」
パカッとアランドロンが二つに割れる。
「寝てねえよ!!こいつが俺に着物を着せたがって……家族の誤解を解くのに、どんだけ必死だったか…!」
中から古市が出てきた。
浴衣姿を見ていると、シルエットだけなら女にみえそうだ。
「………随分可愛いじゃねえか」
「は、はあ!?馬鹿言うなよ!?」
しかし、薄いピンクの浴衣は、どう見ても可愛い。
「従姉妹のお下がりだから仕方ないだろ!」
「……ま、いいや。行くぞ。」
「ダー!」
「わたくしも……」
アランドロンがいそいそとハッピに着替える。どう考えても違う。
「留守番ね。」
男鹿が玄関にアランドロンを蹴り込む。
「じゃ、行こうか古市君。」
神社の方角からお囃子が聞こえる。
微かに綿菓子か何かの甘い匂いが漂ってくる。
道路には、夕日で二人の長い影が射していた。
………その影の先端に、これまた浴衣の為に生まれて来たかのような美人が、電柱に隠れて後を付けていた……
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