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「なんか喉渇いたな…」
「じゃ、あれだな。」
気温30℃。ラムネの売れ行きは好調なようだ。軽く列が出来るぐらいだった。
「遅いな……」
「おや?お二人さん、これはどうも!」
後ろから声がしたので振り返ってみると、夏目がいた。
「神崎さんとこで爆発がしたんで、まさかとは思ったんですが…やはりあなた方だったんですね。」
私服姿に前掛け型のエプロンがよく似合う。前掛けに書かれている文字から察するに、このラムネ屋の店員みたいだ。
「お前、ここの店員か?」
「え?まあそうですが…」
古市が丁寧に頼む。
「こう…ショートカットー…とかダメですかね…?」
夏目は少し考える素振りを見せた後、
「……いいでしょう、お二人さん此方へ。」
店の裏に案内された。
裏には、ラムネの他に、ビール、コーラ、お茶の缶がクーラーボックスに入れられて、山を作っていた。
二人はその後ろに座らせられ、待つように言われた。
夏目は他の店員と混じってラムネの瓶を2つ取ってきた。
「どうぞ。」
「おう。」
「ありがとうございます。」
ビー玉を落とし、飲み始める。
キンキンに冷えていて、炭酸が痛いぐらいだ。
「あ~生き返る……」
「この一本がいいんだよ…」
その光景を薄ら笑いを浮かべながら、夏目が眺めている。
「まるでオッサンみたいですね……」
「うるさい。」
最初に男鹿が飲み終わり、次に古市が飲み終わった。
「よし、行くか。」
「ああ。……夏目さん、何円ですか?」
夏目は黙って首を振る。
「どうせ店の金なんで、いいですよ!」
「よし、行こうか古市。」
「はえーんだよ!!少しは遠慮ってヤツを見せろ!!………あの、本当にいいんですか?」
「それを言うなら店の裏に案内した時点で、悪いことしてますよ。」
「いや…本当にすみません。」
男鹿は堂々と、古市はコソコソと店から離れた。
「まあ………」
だいぶ離れた時に、夏目が呟く。
「………二人への、ささやかなプレゼントですよ。」
「おい古市、今何時だ?」
「え?」
古市はケータイを確かめる。
八時半……か。
「そうか……なあ、あっち行かね?」
男鹿は、遠くに見える神社の境内を指差した――
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