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「はっ……何それ?」
呆然となる。
「何それって、俺がそう言う噂を広めたんだよ」
克信は詫びれる事もなく、逆にキレた口調であり、面倒臭そうに話す。
「意味分かんないよ……。
だって……私達……」
「付き合ってたけど、お前キス以外一度もさせてくれなかったクセによく言うよな」
絶句ものだ。
やらしてくれなかったからなんて……。
ただ、やる関係とかになるのも嫌だった。
せめて結婚をしてからの方が、恐さも何もないと思った。
そんな自分勝手で困らせていたなんて、思いも知らずに……。
しかし、
「だからってそんな噂……!」
彼の言い分はよく分かったが、何故そこまでする必要がいるのか不思議となる。
「悪いけど、他に女が出来てよ。
しかもご令嬢だよ、ご令嬢!
それなのに、他に女がいたのがバレたら俺の方がいられなくなるからな!
悪いけど、さいならだ!」
あからさまな自分勝手の理屈だった。
私は男に捨てられ、その男によって職を失ってしまった。
なんでそんな男と付き合っていたのか……。
無性に己を恥、そして己に怒りを覚えた。
夜────。
「おやじ!!!!
酒持って来い! 酒!」
女性は酒屋でやけ酒を飲んでいた。
「おねぇちゃん、もう飲まねぇ方が良いって!
飲み過ぎると後悔するよ」
酒屋の店主がそう言うが、
「うるさいわねぇ……。
私、失恋してその男がご令嬢と結婚したいが為に有らぬ噂をたてられて、クビにされたのよ!
女だって……飲まなきゃ立ち直れないってぇの!」
完全に酒に飲まれかけていて、もう誰も止められない。
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