日常の変化-二年前-

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「…何処だ、ここ。」 見知らぬ土地で彼女は呟いた。 剣道で着るような胴着を身に付け、左手には竹刀。 髪は高い位置で後ろにくくり、凛々しい顔立ちも今は間が抜けている。 彼女の名は望月音。 年は数え年でいうと17。 「えーと…?」 そんな音は周囲に目を泳がし、状況を理解しようと頭を働かす。 顎に手を添え、まずはここが何処なのか考えてみた。 周りにあるのは木。 何処を見ても木。 あれ、と頭を捻った。 …ここは…見覚えがない…? 今、自分が立っている場所は記憶に無い。 ますます分からなくなるこの状況に彼女は顔をしかめた。 「どうゆうこと…?」 疑問を口に出してみるも、答えてくれる人はいない。 音は頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。 どうして…? 一体、何が起きたというのだろう。 自分はただ、家で竹刀を振っていたはずなのに。 座り込んだ音の体を柔らかな風が包み込み、木の葉を揺らした。 サワサワと流れる風を肌で感じながら、妙に現実味溢れるその感覚に目を閉じた。 「…………。」 ――――それは、唐突に起こった。 もはや考える気力さえ失い時の流れに身を任せていた音に、 『ねえ。』 そんな声が聞こえたのは。 「…!?」 まるで、今まで傍にいたかのようにその声はすぐ近くで聞こえた。 音は伏せていた顔を上げ、激しく辺りを見回す。 彼女の目には何も写らなかった。 あるのは先程見た景色と変わらない、ただそこにあるのは木々の群れ。 「聞き間違い…?」 何処を見ても変わらない。 ついに幻聴まで聞こえてきたのか…、とうんざりしていると、 『ねえ、聞こえてるんでしょ?』 先程と同じ声が響く。 「えっ…。」 幻聴ではない。 音は確信し、再度辺りを見回すが姿が見当たらない。
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