日常の変化-二年前-

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そこで音はあることに気付いた。 というより、忘れかけていたことがスッと脳裏によぎったという状態。 『どうしたの?』 声は尋ねる。 音は気まずそうに後ろ頭をかき、これまた気まずそうに声に疑問をぶつける。 「母さんは…?」 そう。 音の記憶にある事故、声から自分は残念ながら死亡した、ということは聞いたのだが。 母の安否は聞かされていない。 正直にいうと彼女はそのことを忘れていた。 声もその様子に気付いたのか、簡潔に事の顛末を話した。 『あの事故で死亡したのは君一人。君の母も相手の運転手も無事だよ。』 “相手の運転手も”のところは吐き捨てるように言い、そこは少々疑問の残る所だが音は気にしない。 母が無事、その事実に胸を撫で下ろした。 「よかった…。」 『安心してる場合じゃないよ。』 「…分かってるよ。」 家族の無事に安堵する余裕さえ与えてくれないのか。 音は声がいると感じる場所に冷ややかな視線を送る。 『知っての通り、ここは幕末と呼ばれる時代、そして動乱の京都だよ。何で僕が君を此処に連れてきたか、その理由を』 「ちょっと待った。」 声の話に妙な引っ掛かりを覚え、話を中断させる。 …今、コイツは何て言った? 思い出せ。 『何?』 自らの話を遮られたのがそんなに不快なことだったのか、声は不機嫌そうだ。 「あ。分かった。」 声の愉快、不愉快など音にとってはどうでもいいことで。 考えに考え、引っ掛かりの原因を掴んだ彼女は、 『うわっ!?』 声のいるとされる場所に竹刀を降り下ろした。 「ちっ…。外したか。」 『いきなり何すんの!』 竹刀は虚しく空を切り、音は悔しそうに顔を歪め、声は彼女の予想外な行動に驚きと焦りの混じった声をあげる。 「何する、って…アンタが何してんだー!」 どうやら声は言ってはならないことを言ってしまったらしい。 『えぇっ!?ちょっ…何のことだよ!』 「亡くなった人間の魂を何だと思ってんだ!この馬鹿ーっ!!」 『…ん?あ…。しまっ…!』 声も今頃になって気付いたのか、しまった、と思いっきり言ってしまっている。
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