一枚目

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広大な、見渡す限りの大地。その場を人の足音が支配していた。 帝国と皇国の戦争。両国の国境で起こる、いつ終わるかもしれない泥沼化している戦争。 そんなシリアス極まりない場に俺はいた。戦闘員でもないのに帝国兵に追っかけ回されているが。 「まちやがれ、このスパイ野郎が!」 帝国兵の怒号を背中に浴びつつ、俺は全力で逃げている。中々に重量のある装備をしている割には兵士達の足は早い。 「待てと言われて待つのは動物ぐらいだ!てか俺はスパイなんかじゃねぇー!」 戦場から少し離れた帝国側の森。生い茂る木を何本もパスし、帝国兵を撒こうとするが土地勘は流石に帝国領だけあってあちらにあるのだろう、どこにいっても回り込まれている。 「しつこすぎるだろ畜生!流石に、本陣を撮るのは無理があったかなぁ……って……!」 必死に逃げていたので気がつかなかったが、帝国兵のいないほういないほうに進んでいく内に、帝国兵に誘導されていることにやっと気がついた。 追っ手を避け森を抜けた先はゆうに20mはある崖の下だった。 「はぁはぁ……やっと……追い詰めたぞクソガキィ……」 リーダーらしき男が、顔を真っ赤にしながら腰にさしている剣を引き抜く。それにあわせて他の兵士も武器をかまえる。 「目ぇ血走ってんぞオッサン。こぇぇよ」 相手の数は六人。剣三人に槍一人、弓が二人。まさに絶体絶命というやつだ。 「……この装備で走ってみろ、地獄だからよぉ……ぜぇぜぇ……」 そりゃこの気温でその装備は熱こもって暑いだろうな。兵士ってのは大変だよな、色々と。 「残念ながらそんな特殊な性癖は持ち合わせてないよ。逃がしてくれるってならやってやってもいいけどさ」 「仮にやったとしても逃がさねぇよ、スパイ野郎が!」 「だからスパイじゃねぇって言ってるだろ!これが目に入らないのかよ!」 そうして俺は首にかけているカメラを見せる。使い込まれている古い型のカメラ。 「それ見たことか!それで我が国の機密を盗もうとしたのだろうが!」 「ちっっがーう!!俺はなぁ……」 一息おいて腹の底から叫ぶ。 「ただの善良な〝カメラマン〟だってば!」 叫び声が虚しく響き渡る。訪れる静寂。 とりあえず、兵士達の哀れな物を見るような目は暫く忘れないだろうな、と俺は思った。
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