三枚目

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炎が宙に舞う。輪になったり渦状になったり竜の形になったりと次々と形を変える炎の魔法は人のなせる技だとしても目をみはる物がある。 「おぉ~凄いな」 「キレイ……」 魔術師の自由に炎を操るパフォーマンスに目を輝かせているアリアとサヤさんの二人。それを少し離れた所から見守る俺とジル。 「聞いたぞ!取材中に帝国に捕まったんだってな!?ホントにお前は写真の事になると馬鹿っていうか何て言うかさ!」 心配するような言葉を投げ掛けてくるが、少しも態度には心配そうな感じはない。何時もの事だと思われてるのだろう。 「ほっとけ。お前の馬鹿さ加減にはかなわねーよ」 「いや、馬鹿さのアベレージは俺が勝ってても、マックスで言うなら俺よりライのが圧倒的に馬鹿だね!」 「何だそれ」 自分を馬鹿だとすっぱり言い放つものだから思わず笑ってしまった。 馬鹿みたいに元気な奴だ。いや実際馬鹿なんだけど。 でもこの元気さに幼かった頃の俺とアリアは救われてきたのもまぎれもない事実だ。 いつも三人で色んな事をしてきた。そしてこれからもそうなんだろう。 「ようするにお前はひょろっちいんだから無理すんなって事だよ!」 「はは、善処するよ。そういうお前は相変わらずアレやってんのか?」 アレとは下ネタとかじゃなくジルがやってるパフォーマンスである。念のため。 「おう、とうとう100連勝まであと一人だぜ!」 グッと拳をつきだして言う。 パフォーマーである魔術師の炎が花火のように爆ぜた。魔力の残骸が光を受けてキラキラと輝いている。どうやらパフォーマンスが終わったようだ。 観客から拍手が巻き起こる。観客といっても今日は平日なので客は俺達だけだったが。 「凄い凄い!キレイだったねアリア!」 「あぁ、実戦で使う魔法とはまた違くていいな!」 魔術師がトンガリ帽子を二人に差し出す。 「何だ?帽子くれるのか?」 魔術師は首を横に振る 「違うわよアリア。これに見物料として自分の好きなだけお金を入れるの」 「へぇ、いくらでもいいのか?」 魔術師がうなずいた。 「気持ちの問題なのよ。そのパフォーマンスの価値を決めるのは見ている自分って事。だからつまらなかったらホントに少しでいいし、楽しかったらそれ相応の額をいれるべきよ。それが礼儀」 そういってアリアは札を一枚入れる。 そうか、と呟いてサヤさんはアリアと同じ額を入れた。
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