三枚目

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ありがとうと言う魔術師の言葉を背に受け二人が満足げにこっちにやってくる。 しかしサヤさんはジルを見て少し警戒しているようだ。 「ライさん、その人誰ですか?」 そういや人見知りって言ってたっけ。 「こいつは――」 「初めまして!俺ジルって言うんだ!特技は力仕事!趣味は釣り!ヨロシク!得物は槍!コイツ等とは腐れ縁なんだ!二人の友達ってことは俺とも友達だよな!?」 「はぁ……私に聞かれても……どうなんでしょうね?」 「……はぁ」 グイグイと自己主張するジルにただでさえ人見知りのサヤさんの警戒心は更に増す。その端正な顔には距離を感じような微笑が貼り付いている。実に困った空気だ。 人見知りという言葉が辞書にないジルとサヤさんは馬が合わないかもしれない。サヤさんと目があう。助けてくれといっているような目だった。 「おいジ――」 「こら!アンタの馴れ馴れしさにサヤがビックリしてるでしょ!このスカタン!」 助け船を出しかけるが言い切る前にアリアに遮られる。何か遮られるの多くね? おうアリア、とジルがアリアに相づちを打つ。 「何だよー?馴れ馴れしいって言われても友達ならこんなもんだろ!」 そう言ってサヤさんと握手し、ブンブンと手を振る。凄いブンブン振る、ジルが。 「アンタは友達の定義が広すぎるのよ!会って早々友達って、ならアンタの友達は何人いるのよ!てか腕もげそうなんだけど、その勢い!」 「人類皆、友達だ!」 迷いなく言う。冗談ではなく本気で言っているのがジルの凄い所だ。色んな意味で。 「それは流石に見境無さすぎるぞジル……」 ついそう呟いてしまった。 アリアがジルにツッコミ、しかしジルの超天然ボケは聞く耳を持たない。それをどうしようもなく見守りながら嘆く俺。 俺達が大人になってもこの役割分担は小さい頃から変わらない。 「はは。いい人なんだなアンタ。なぁ、ここにいるって事はアンタもパフォーマーなのか?」 やり取りを見てジルに害がないのがわかったのか、サヤさんの口調は俺達と接するような口調になった。 「ああ!まぁ他の人のに比べると全然つまんねぇんだけどな!」 親しくなったと感じたのかジルは声のボリュームとトーンを上げる。正直うるさい。 「どんなんやってるんだ?」 よくぞ聞いてくれたと、ジルはどこからともなく机を持ってきて言った。 「おれのパフォーマーンスは、腕相撲だ!」
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