三枚目

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「パフォーマンスかそれ……腕相撲なんてやってどうするんだ?」 意味が解らないといったサヤさんの表情。 サヤさんはおそらく、腕相撲をやればどこにスカウトされるのか考えているのだろう。しかし思い付かないようで、困惑しているようだ。 そりゃそうだ。腕相撲やってるだけでどこかにスカウトされたら苦労はない。ただでさえスカウトされるのは一握りの存在なのだ。 しかしサヤさんが意味がわからないのも当然だ。何故なら。 「どうもしない!」 元気のよい声で言うジル。ここが学校だったら誉められてしかるべきかもしれない。しかしこの場では残念ながら馬鹿っぽさを増長させるだけなのだが。 結論から言うとコイツの行動自体には意味はないのだ。 呆気にとられたサヤさん。しかし直ぐに笑顔をつくり生暖かい眼でジルを見た。 「あぁ、そうか……」 「そうだよ!」 会って一分ほどしかたってないが、大体ジルの人物像がわかったといった様子のサヤさん。 あぁという感嘆には色んな意味が込められているんだろう。 (いいやつなんだろうけど……) (そう、いいやつなんだけど……) サヤさんとアイコンタクトで会話する。何を考えているか目を見ればわかる。そこまで俺達の考えている事は表情に出ていた。 再び二人で笑顔のジルを見る。 「?」 本人は何にもわかってない様子だ。笑顔は崩れない。 しかし、コイツの笑顔を見てると、まぁいいかと思わせてしまうのもコイツの魅力だと思うよ、うん。 「よーやく百連勝目前なんだ!やっと師匠に認めてもらえるよ!」 「腕相撲の師匠がいるのか」 もう大して驚かないサヤさん。そのなげやりな感じは何となく諦めに近いような気がする。 「あー違う違う」 しかしアリアが訂正する。 「コイツね、武器職人になりたいのよ。でもコイツの師匠がね、天才なんだけど変人なのよ。」 「おいアリア!師匠を変人とかって言うなよ!」 しかしアリアは無視して続ける。流石に慣れているだけある。 「でもその師匠が教えるのは面倒だから、その師匠が課題とかいって無理難題つけて楽しんでんだけど、コイツ馬鹿だからさ、無駄に頑張って達成しちゃったりすんのよ。そしてそれを面白がった師匠がまた他の課題をだしてまたコイツがそれを達成する……ってのを何回も何回もやってて、それが今腕相撲百連勝ってわけ。わかった?」 「あぁ、よくわかった……」
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