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「何で遊ばれてるって解ってんのに無駄な事すんだかな。親友だが正直理解に苦しむぞ」
親友としてはずっとこのままの調子で変な事して過ごすんじゃないかと心配になる。
別にこの街には腕の立つ武器職人何ていっぱいいるんだから、他の人に師事をしてもらうほうが手っ取り早いのに。
「何を言うか!師匠の言うことに無駄な事なんてない!腕相撲だって鍛冶に必要な筋肉をつけるためにさせてるんだよ!多分!」
どこまで師匠を尊敬してるんだろうかコイツは。拳を握りしめて熱く語っている。何か感極まって泣きそうだ。
「ホント無駄にポジティブよねアンタ」
「ここまで純粋だとまるで恋する乙女みたいだな」
「こういう所がアイツに面白がられてんだろうなぁ……」
三者三様の反応だが、意識は呆れに統一されていた。
「まぁ、人生色々だ。好きにすればいいさ。それでお前さ、さっさと百連勝したいんだろ?俺と一勝負しないか?」
「「「は?」」」
突然サヤさんが言う。着物の袖を捲り、机に右腕をのせた。白く細い綺麗な女の子らしい腕。
「さぁ勝負だ。まさか百連勝妨げられたくないからって逃げたりしないよな?」
ニヤッとサヤさんが挑発するような笑みを見せた。
「どうしたのよサヤ?コイツと腕相撲したってどうしようもないでしょ?」
「まぁまぁ黙ってみててくれよアリア」
問いただすアリアを制しサヤさんはジルを見据える。
ジルはニカッと笑うと右腕を出した。サヤさんとは対象的な筋肉のついたたくましい腕。
「いいのか?俺はどんな奴にでも本気だぜ?勝てると思ってんのか?」
「やってみないことにはわかんないだろ?男なら何も言わず黙って勝負受けろよ。」
挑発を挑発で返す。
「はっはっは!違いねぇ!!そんじゃあ、いっちょやりますか!」
二人は腕を組み、腕相撲の構えをとる。腕の太さを見れば、どちらが勝つか予想は一つに偏るというものだ。
サヤさんには勝利する算段があるのだろうか?そもそも、何のために?ジルに簡単に百連勝させるためではないとは、サヤさんの性格からしてわかるのだが。
「それでこそ男だ。なぁ一つ頼みがあるんだが、俺が勝ったらその師匠に会わせてくれないか?」
「おぉ、いいぜ!ライ審判頼むぜ!」
なるほど、そういう事か。考えてる事はわかったが、サヤさんは勝てるのか?
「わかった。それじゃ、レディー……ゴ!」
二人の手を握り、始まりを告げる。
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