三枚目

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ジルの百連勝がかかった腕相撲。ジルの性格とモチベーションからしてジルが本気を出して直ぐに終わると俺達は思っていた。 しかし二人の力は俺達の予想に反して拮抗した。少しばかりジルが押しているが、そこまで優位な位置までは押し込めず二人の動きは止まった。 「おいおい……何処からそんな力……が出るんだよ!」 「はっ……乙女の力は……無尽蔵さ!」 「はっはっは……違い……ねぇ!」 軽口を叩きながらも二人の腕には少くない力が込められているように見える。踏ん張りようからして二人とも本気でやっているようだ。 「いやぁ……凄いわねサヤ」 「あぁ……ホントにな。どうやら本気で勝ちにきてるっぽいな」 アリアが目を丸くして驚いている。ジルの力を知っているなら尚更だろう。 俺も驚きを隠せない。ジルの身体能力はこの街でもかなりのレベルだ。少なくとも、一介の女の子に負けるわけはないと断言できる。 しかし俺の中のその概念が覆りかけている。そもそも拮抗する事自体がおかしい。 サヤさんはただ者ではない。単純にそう思った。 「ふんがぁ!」 「っ……」 しかし、腕相撲は単純な力比べ。流石にジルの方が分があるようだ。徐々に拮抗が崩れ始めた。 「そろそろ……勝たせて貰う……ぜっ!」 止めをさそうとジルがより一層力をこめる。明らかにジルの優位な位置にまで腕が下がった。 ここまでか、と皆が思った時。 「あっ……あん…」 「「「!?」」」 サヤさんの甘い喘ぎ声。明らかにジルに動揺が走った。いや皆にか。 サヤさんはうなじに少し汗をかいていて着物姿が妙に艶っぽい、息づかいが荒くなっているサヤさんの姿を見てしまう。正直、色っぽい。 俺もジルもアリアも、見てはいけないものを見てしまった感じになった。 ……これで18は反則だろ! 「スケベ」 そして動揺するジルの隙を見逃さず、サヤさんが劣勢を覆した。 苦しそうな表情から一変、薄い笑みを浮かべていた。アレは演技だったみたいだ。……末恐ろしいな。 一回下がると持ち直すのは厳しい。そのまま押しきったサヤさん。ジルの手の甲が机に当たった。 大方の予想を覆し、勝利したのはサヤさんだった。 「ぶい」 サヤさんは笑顔で勝利宣言した。
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