二枚目

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アリアと会ってから暫く写真を撮っていたがそろそろ日も暮れてきた。 しかし街を照らす光は太陽から人口の光に替わっただけで明るさはむしろ増している。 「今日は夕御飯食べにくるでしょ?」 「いきなり行っても大丈夫なのか?」 「何を今更。そんな遠慮するような関係でもないでしょ?今日はカレーだよ?」 「行く!」 帰ってくるなり俺の好物を用意してくれるあたり、流石の付き合いの長さだなぁとしみじみ思う。因みにアリアの料理は絶品だ。 「ライってホントにカレー好きだよね。まぁ今日のカレーはちょっと隠し味を工夫してみたから楽しみにしててね……って何だろ?あの人だかり?」 「乱闘か何かか?何やら物騒な感じだな」 俺達がアリアの家に向かっていると、何やら前方に大きな人だかりが出来ている。 この街は治安の差が区画によって激しい。 豪商や有力な議員や高名な魔法使いなど、いわゆる富裕層が住む区画は一日中優秀な警備員が見回りをしている。どんな問題が起きても即鎮圧される、セキュリティーも完備されている超がつくほどの安全な区画だ。 それとは対照的に、貧困層が住む地域は一歩曲がり角を曲がれば有り金全てを巻き上げられるほどの無法区画だ。来るものは拒まないこの街は、国を追われた犯罪者も数多く存在する。乱闘騒ぎなんて毎日のようにある。 俺達が住んでいるのは主に一般層が住んでいる普通の地域だ。そんなに治安が悪いわけではないが、飛び抜けて良いわけではない。乱闘騒ぎなどもたまにはある、そこそこ珍しい事に人だかりが出来るのも自然な事だろう。 「やっぱりこの辺りもまだまだ安全とは言えないな。アリア、お前も気をつけろよ…………って!」 俺の隣にいたアリアがいつの間にかいなくなっていた。嫌な予感がしてアリアを捜してみると、アリアは人の波に割って入っている途中だった。 「馬鹿、あぶねぇから行くなアリア!」 アリアは優しい子だが、同時に正義感もかなりのものだ。呼吸をするのと同じように、当たり前のように人助けをする。騒ぎの中心で困っている人の気持ちを考えたらいてもたってもいられなくなったんだろう。考える前にまず行動を地でいくような奴なのだ。 そんなアリアの小さい頃からストッパーを努めてきた俺も当然のように、人の波に割って入る。 そして事件の中心にいたのは、何人かの男共と。 着物姿でナイフを手にしているとても綺麗な女の子だった。
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