【2章】ギターと神の歌

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次の日、辰也が浜辺に向かうとそこには、もう菜々瀬が座っていた。   「早かったなぁ」   菜々瀬は勢いよく振り返った。 そして、じっと見つめた。   「なんだよ」   菜々瀬は首を横に振って、目線を戻した。 辰也が隣に座る。   「辰也。…これ」 「…ん?」   辰也は束になったファイルを受け取った。   「…私、明日から三日間ここに来れないの。だから…」   ファイルを開いてみる。 楽譜だった。   「すげぇ。全部、手書きじゃん!」 「…私とお父さんとで作った歌」 「…一番好きな歌?」   菜々瀬は恥ずかしそうにうなずいた。   「頑張って練習するよ」 「…ありがとう」   か細い声が言った。 辰也がギターに手をかけ始めた。 しばらくして、黙って俯いていた菜々瀬が顔を上げた。   「…夜中は外に出られるの?」 「夜中?」 「…12時とか、1時とか」 「…窓から出ようと思えば、出れると思うけど。…なんで?」 「明後日と明々後日…」 「夜中来れないかって?」 「…うん」   ((何考えてんだ、こいつ…寝るよりもこっちが大事だってのか?)) 辰也は頭を掻いた。   「無理ならいいの」 「いや、無理じゃないけど…。三日間、何があんだよ」 「…………」
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