【2章】ギターと神の歌

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菜々瀬は膝に唇を沈めた。 そのまま動かない。   「…いいよ!明後日とそん次な」 「…いいの?」 「良いけど、お前が無理すんなよ。何が出るか分かんないからな」   ((とは言ったものの…))   ((夜の海ってのは、怖い、恐ろしい、もんだなぁ。あいつは本当に来れんのかなぁ。変なやつに出くわしてなきゃいいが…)) 辰也のギターが音をたてる。 菜々瀬に渡された楽譜の始めである。 音は暗闇に冷たく響いて、波に飲まれて消える。 近くに立っている街灯のおかげで、弦の位置はなんとか分かる。 楽譜はほとんど見えていない。 ふいに気配を感じて振り返ると、菜々瀬が立っていた。   「大丈夫だったのか?」   菜々瀬は頷いて、その場に座ってしまった。 辰也からは少し離れている。 辰也は少し疑問に思ったくらいで、また話し始めた。   「あ、この楽譜、一通り弾けるようになったよ」 「『風の想い』?」 「そ。菜々瀬が好きなヤツ」 「聞かせてもらえる?」 「おぅ」   辰也の指が音を刻んでいく。 とても静かに。   菜々瀬は膝をぎゅっと抱えた。 全く口を動かそうとしない。 ((気に入らないのかなぁ…やっぱり))
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