【2章】ギターと神の歌

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半ば適当になって止めようとしたとき、菜々瀬は顔を上げた。   「そこまで?」 「…いや…気に食わないかなって思って…」 「ううん。そんなことない」 「どこから弾こうか…」 「Cの手前から」 「…C?」 「楽譜に書いてある」 「暗くて見えないんだよ」   そういうと、菜々瀬は辰也の隣にあった楽譜に向かった。 楽譜を見下ろしながらしゃがみこむと、四つん這いになってページをめくった。  それを微笑みながら見ていた辰也は、ふと、菜々瀬の着ているシャツの袖に目線を落とした。 手首の少し上から肘にかけてが他とは違う色をしていた。 ハッとして菜々瀬のほうを見た。 よく見ると、左の頬に擦ったような傷があった。   「…ここだよ。うーんと、このリピートの……」   顔を上げた菜々瀬は言葉をなくした。 辰也はしかめっ面でこちらを見ている。   少しの沈黙の後、思い出したように腕を押さえ、パタンと座った。 目はいつになく泳いでいた。   「どうしたんだよ、それ」 「…転んだの」 「菜々瀬!」   菜々瀬はビクッとして顔を上げた。   「嘘なんてつかなくて良いんだから。言いたくないならそう言えば良いだろ?」
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