【2章】ギターと神の歌

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菜々瀬は肩の力が抜けて、キョトンとした。   「…怒らないの?」 「怒られたかった?」 「ううん」   辰也は言いながら、菜々瀬の腕をとった。 シャツの袖を捲り上げた。   「うわっ。すんげぇ傷!よく我慢できたなぁ…」 「うん」   そう言った菜々瀬は涙目だった。   「バカ」 「…だって、痛いんだもん」   菜々瀬とは対照的に辰也は笑みを漏らした。   「5分くらいここで待ってられるか?」 「うん」 「今、家から薬とか取ってくっから」   辰也は走り去った。   菜々瀬は腕の痛みに顔をゆがめていた。 風はだいぶ冷たくなっていたし、海の音は大きくなっているように思えた。 菜々瀬は辰也が来るまでの間、風だけでもどこかで凌げないかと立ち上がり、近くにあった小屋の裏側に回りこんだ。   腕の傷を気にしていると、突然、顔に光が当たった。 同時に声が上がった。   「菜々瀬!」 「いたぞー!!」 「どうしてこんな所まで…!!すごい怪我してるじゃないか!」 「二階から飛び降りるからだぞ!何かあったらどうするつもりなんだ!」 「さぁ、行こう」   菜々瀬は引かれた腕を引き返した。   「菜々瀬!」 「あと5分でいいの」
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