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次の日、約束の時間になっても菜々瀬は現れなかった。
それから1時間…2時間…3時間。
((ま、まさか…なぁ))
波の音が大きくなった。
((波にさらわれた?無事に家にたどり着けなかった?誰かに連れて行かれた?))
波は更に大きくなる。
((そうだ!警察に!!))
そう思い勢いよく立ち上がった辰也は、すぐにまた座り込んでしまった。
((菜々瀬の何を知ってるっていうんだ…オレは…))
((オレは…))
潮風が頬に冷たくあたった。
波の音は何もかもを飲み込んで消した。
目の前が真っ白になって、何も分からなくなってしまっていた。
いつの間にか辺りは薄明るくなっていた。
そんなことなど考える余裕はまるでなかった。
そして、すっかり日が昇ってしまった。
休日だったのが不幸中の幸いだった。
「あれ?お前こんなとこで何やってんだよ。ボーッとしてさぁ」
ハッとして振り返った先には、クラスメートの祐介がこちらを覗き込んでいた。
辰也は戸惑いながら前へ向きなおした。
「…なんだ、お前か…」
「おい!ひでぇ奴だなぁ…」
「あぁ…悪い…」
祐介は不思議そうに辰也を見下ろした。
((…やけに素直だなぁ))
「…あれ?」
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