【2章】ギターと神の歌

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辰也は思い出したように顔を上げた。   「どうした?」 「…今何時?」 「あーんと…7時半過ぎだな。36分」 「マジかよ…」 「ん?」 「………」   辰也は頭を抱えた。 ((ただ事じゃなさそうだな)) 祐介は辰也が大切にしているギターが浜の上に落ちているのに気がつき、拾い上げた。 砂を掃うと、隣にあった楽譜を眺めた。   「へぇー。手書きじゃん。スゲェなぁ…」   辰也は少し顔を上げた。 横目でちらっと祐介を見ると、目が合った。   「何かあったんだろ?」 「…ねぇよ…」 「…。これお前の字じゃないよなぁ?…あー、カミヤ…ナナセ?」   辰也の顔が歪む。   「うるせぇ!!部活あんじゃねぇのかよ!」   祐介の顔は何かを悟ったように変わらない。   「人がせっかく心配してやってんのにな」   そう言って、立ち上がった。 そして、そっぽを向いたままの辰也に呟くように言う。   「…オレで良かったらいつでも声かけろよ…。じゃぁなっ!」   辰也の顔が静かにほどけて、走り去る祐介の背を目で追った。   ((バカな奴だよな…オレって…)) あざ笑うかのように波が打ち寄せてきた。 ((ただ…ここで…こうして…黙って…。何もしないで…))
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