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辰也は思い出したように顔を上げた。
「どうした?」
「…今何時?」
「あーんと…7時半過ぎだな。36分」
「マジかよ…」
「ん?」
「………」
辰也は頭を抱えた。
((ただ事じゃなさそうだな))
祐介は辰也が大切にしているギターが浜の上に落ちているのに気がつき、拾い上げた。
砂を掃うと、隣にあった楽譜を眺めた。
「へぇー。手書きじゃん。スゲェなぁ…」
辰也は少し顔を上げた。
横目でちらっと祐介を見ると、目が合った。
「何かあったんだろ?」
「…ねぇよ…」
「…。これお前の字じゃないよなぁ?…あー、カミヤ…ナナセ?」
辰也の顔が歪む。
「うるせぇ!!部活あんじゃねぇのかよ!」
祐介の顔は何かを悟ったように変わらない。
「人がせっかく心配してやってんのにな」
そう言って、立ち上がった。
そして、そっぽを向いたままの辰也に呟くように言う。
「…オレで良かったらいつでも声かけろよ…。じゃぁなっ!」
辰也の顔が静かにほどけて、走り去る祐介の背を目で追った。
((バカな奴だよな…オレって…))
あざ笑うかのように波が打ち寄せてきた。
((ただ…ここで…こうして…黙って…。何もしないで…))
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