【2章】ギターと神の歌

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((それなら、13日のに…)) 神屋という名前は無かった。   「…なんでだよ…」   ((探すなってことなのか…?)) そんな言葉は足にまでは届かなかったらしい。 その足は住宅街に達した。   表札のひとつひとつを確かめながら町内を駆けずり回っていた。 歩いて、歩いて、走って、歩いて、走って、走って、走って…。 ちょうど町内を一周しきったところで、陽が沈んでしまった。   結局"神屋"という表札は見つからなかった。 それどころか、"神屋"の"神"の字だってありはしなかった。   辺りはまだうっすら明るく、西の空はまだ赤く染まったままであった。 (("神"に見放された…か)) アスファルトを力なく歩いていた。   風は無く、暖かい。 足は波の音のする方へ進んでいった。 どんなに近づいても、静かな波の音だった。 浜の上には辰也のギターがあった。 楽譜と並んだままである。 おもむろに拾い上げて砂を掃うと、しばらく嫌なくらいに静かな波を聞いていた。   目に映るのは、ただただ広い海だけだった。 雨雲で空が覆われているなど気づくこともできないで…。   次第に風は強まり、波は荒れ始めた。 空が大粒の雨を落とした。 辰也の頬を雫が伝った。
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