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辰也(シンヤ)はこの海の近くに住んでいる高校生である。
高校生と言っても、ついこの間、入学式を迎えたばかりのホヤホヤだ。
制服が中学校と同じ学ランだった所為か、まだ高校生だという実感がない。
そして、いつもの様に浜辺に来るのである。
春先の海はあまり気持ちの良いものではない。
潮風が身にしみる。
それでも辰也は何かに操られるかのようにここに来てしまうのだ。
その所為か、何か異変があるとすぐに気が付くのである。
―そして今日、異変を見つけた。
いつもの岩場に着き、一番高い岩の頂上にいつものように座った。
昨日の雨で少し波が高かった。
浜には昆布とか流木とか、それに紛れてゴミなんかも打ち上げられていた。
よく見ると、その漂流物の間を上手く避けた小さな足跡が見えた。
足跡は岩場の脇から浜をくねくねと進んで、どんどん海に向かっていく。
それは波打ち際で波に洗われていたが、足跡の主はすぐに知れた。
薄手の白い長袖のワンピースに裾の広い白のズボンをまとった女の子だった。
手には一本のギターを持っていた。
((あの子、ギター弾きに来たんだなぁ))
そんなことを考えてただボーッと眺めているとその子は思わぬ行動に出た。
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