【2章】ギターと神の歌

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彼女の名前は神屋菜々瀬(カミヤナナセ)。   この近くに住んでいるらしいが、良くは知らない。 父親の遺産や保険金、それに障害者のためのなんとかで生活はそれなりにやっているそうだ。   年は28だって言ってるけど、心は15のままのような気がしてならない。 話や沈黙も苦にはならないし、最近はよく笑ってくれるようになった。   こんな風に言うと、なんかペットの観察日記みたいでちょっとおかしい気もするけど、そのくらい自分の中では大切なことになってきている…気がする。   ポロン…とギターの弦を弾いた。 今まで幾度となく海へ来ているのに、ギターをここで弾いたことはなかった。 思った以上に気持ちの良いことだった。   菜々瀬とここで会ってからかれこれ1ヵ月も経つ。 学校も少しずつ馴れてきたけど、それよりも最近では、ここに来て何を弾こうか考える方で忙しい。 菜々瀬は恥ずかしがってちゃんと歌ってくれたことがないのだ。   「今日は波が静かだね」   ギターの手を止めて声のする方を見た。 菜々瀬が立っていた。   「そうだな。久しぶりに…」   菜々瀬が辰也の隣に腰をおろすと、辰也は別の曲を奏で始めた。
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