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すると、海の方を見ていた菜々瀬が辰也に振りなおった。
「…それ、知ってる」
辰也はちらっと菜々瀬を見て、すぐギターに視線を落とした。
菜々瀬はただ、じっとギターを見つめていた。
「…I know I need do…。…quite…world…」
「歌詞いる?」
菜々瀬は勢いよくうなずいた。
よっぽど好きな歌らしい。
「I know I need to be in love
I know I've wasted too much time
I know I ask perfection of
A quite imperfect world
And fool enough to think that's what I'll find ~」
始め、菜々瀬の歌は鼻歌程度だったが、終わりには気持ち良く歌っていた。
辰也も笑みをもらしていた。
パチ パチ パチ…
辰也が手をたたいた。
菜々瀬は急に真っ赤になっておろおろし始めた。
そして、目を泳がせながら膝を抱えて小さくなってしまった。
「この歌、好きなのか?」
「…お父さんがいつも歌ってたの」
そう言いながら、とても嬉しそうである。
「カーペンターが好きだったのかな?」
「…分からない」
辰也はため息を一つ吐いてから
「何か、歌いたい曲はないの?」
「………」
いつもこう聞くと黙ってしまうのだ。
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