大切なもの

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「………那稚のおかげだな」 「なにが?」 「俺と海羅が出会えた事」 「やっぱり那稚のおかげなのかな?」 「そうだと思いたいな」 海羅は当時すごく好きだった那稚を失った。 俺の異母兄弟。 出会った時の海羅は本当の笑顔を誰にも見せなかった。 今は心から笑ってくれる。 海羅は乗り越えて行ったんだ。 那稚の事も普通に話せるようになった。 那稚が生きていた事を……この世に存在していた事を忘れちゃいけないんだ。 誰かが覚えていないと那稚の存在が消えてしまいそうで怖いんだ。 そんな事はないって分かってる。 那稚がこの世にいたから俺と海羅は出会えた。 そう思っても良いよな? 「だと良いね」 海羅は辛かった過去を乗り越えていったんだ。 長い時間をかけて、ゆっくりと。 海羅には笑っていてほしい。 俺が今、一番に思うこと。 早く独立して本当の家族になりたい。 俺は何も持っていないからそういうのがほしかった。
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