大切なもの

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「……ら!!空!聞いてる!?」 俺は自分の世界に入っていて全く海羅の話に耳を傾けていなかった。 「あっ、ごめん。なに?」 「もう!しっかりしてよー」 そう言いながら最後のトマトを口に運んだ。 「なに?」 「ねぇ……、一つだけワガママ言っていい?」 ワガママ? 海羅のワガママなら大歓迎だよ。 滅多にワガママなんて言わないし。 それに海羅の言うワガママは俺から言わせりゃ“お願い”って言う言葉の方が合っている。 「何でも言えよ」 「明日、講義ないよね?」 「ないよ」 「行きたいところが…あるんだけど……」 行きたいところ? 「どこ?」 「遊園地」 俺は飯を食べる手が止まった。 ここ何年も遊園地なんて行っていない。 二人で遊園地に行った事もない。 一度だって海羅の口から「遊園地」なんて言葉聞いた事がない。 前に俺が「行こう」と行っても「行きたくない」と小さく丸まった事があった。 「良いけど……どーしたの?」 「私ね、ずっと考えてたんだ。 昔の事」 そのあと、海羅はなかなか続きを言わなかった。 下を向いて、躊躇っている。
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