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さくらの場所じゃない。
それが誰かのものになるのは嫌。
片手を胸において大きく息を吸って、ゆっくり吐く。
行こう。
決意して、空とさくらのもとに歩みはじめた。
近づく度に二人の笑い声が大きくなって、ぎゅっと胸が締め付けられた。
「好きです」
さくら声がやけに大きく聞こえた。
その言葉に苦しくなって息ができない。
「……空」
私は聞こえるか聞こえないか分からない声で言ったと思う。
二人の話し声が止まり、ミーンミーンと蝉の鳴き声だけが聞こえた。
二人同時に振り向く。
「海羅……」
大好きな人の私の名前を呼ぶ声。
「さくら。空の隣は私の場所なの」
「海羅……」
空は躊躇いながらも一歩前に足を踏み出した。
「空……戻っちゃダメ?
空の隣に……戻っちゃダメ……?」
空のことを考えると涙がとまらない。
それを見られないように下をむいて、必死に涙を止めようとする。
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