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「何でもない」
私は頭を撫でている空の手を止めた。
「そ?じゃあ、またな」
空は私に手を振って講義室に向かった。
空の後ろ姿をずっと眺めた。
あの大きな背中はもうすぐ私の前から消えてしまう。
空は斜め上を向いて眩しそうに目を細めていた。
一緒にいるのが当たり前でどこか遠くに行ってしまうなんて考えたことはなかった。
距離を置いている時は会おうと思えばいつだって会えた。
だけど、今回はそうも行かない。
遠い、異国の地。
会おうと思って会えるものじゃない。
淋しい。
私は空に背を向けて、自分の講義室に向かった。
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