鍵穴

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講義室に入るといつもの場所にいるはずのさくらがいない。 昨日の今日で顔を合わせるのは正直気まずい。 私は講義室をぐるりと見渡した。 講義室の隅の方でさくらはウォークマンで音楽を聞きながら机に突っ伏していた。 私はそっとさくらのいる席に近づいた。 「さーくらっ!」と、さくら頭の上に持っていたカバンを乗せた。 さくらはイヤホンを外して、ゆっくり私の方へと振り向いた。 「海羅……」 「おはよっ」 私はさくらの隣に腰を下ろした。 今まで仲が良かった友達と気まずくなるのは嫌。 「今日は後ろの席じゃないんだね」 私はカバンから筆記用具を取り出した。 「海羅…ごめんね」 さくらは両手を合わせて私に謝った。 「ん?何が?」 できればなかった事にしたい。 今までみたいに仲が良い友達をやりたいんだ。
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