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「おはよ、蓮!」
俺は1限の講義室で設計図を書いている蓮の後ろから叩いた。
「……何でそんなにすっきりした顔してんの?気持ち悪っ」
蓮は俺の顔を見るなり、近寄るなと言わんばかりの表情を向けた。
「まぁまぁ、そー言わず」
俺はそんな蓮を宥めて、席に座った。
「何?気持ちの整理はできたの?」
「まぁ、そんなところ」
「海羅ちゃんは戻ってきた?」
「おう。やっぱ俺には海羅しかいないよ」
俺には海羅しかいない。
「だったら最初から手放すんじゃねーよ」
ホントだよ。
俺がちゃんと気持ちをセーブできていたらこんなことにはならなかった。
だけど、考えることが多すぎたんだ。
そんなにたくさんの事をいっぺんに考えられない。
何かを犠牲にしなきゃ、やっていけなかった。
誰かを傷つけてまで。
海羅を傷つけてまでも。
母親は…もうどうにもならない。
“また来るから”その言葉が離れない。
家が寝るためだけにあった最近、母親が来ているのかさえ分からない。
海羅の支えは俺にとってとても大きいものだったことに気が付いた。
俺が思ってた以上に海羅は俺を支えていてくれたんだ。
海羅と二人なら何だってできそうな気がした。
だけど、俺はまた海羅を一人きりにしてしまう。
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