日常

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「架南には言った?」 突然架南の名前を出されびっくりして蓮の方を向いた。 相変わらず蓮は設計図を書いている。 「架南が……何?」 「架南がおまえたちの事、一番心配してた」 あー、そーいや架南に殴られたっけ、俺。 “馬鹿空!大嫌い”って言われたな。 架南は自分のことより相手を思いやる。 だからあんなに怒ってくれるんだ。 「……電話してくる」 俺は携帯を持って講義室を出た。 廊下にはたくさんの学生が行き来していた。 みんないそいそと講義室に向かっている。 俺は壁に背を預け、携帯のメモリーから架南を呼び出してかける。 「何?なんか用?」 電話に出た架南の口調はかなりご立腹。 普通「もしもし?」って言うもんじゃないの? 出てくれるだけマシか。 「俺、空」 「あらあら、どうもおはようございます。海羅を泣かせた空くん」 うっわぁ……めっちゃ、怒ってんじゃん。 「えっと……無事、海羅と仲直りしました」 「無事じゃないじゃん!海羅めっちゃ泣いてたのに!!」 「分かってるって」 「今度泣かせたら一生許さないからね!!」 耳をつんざくような大声。 今度泣かせたら、か……。 「…ごめん。それはちょっと約束できないわ」 俺は海羅を一人きりにしてしまう。 きっと少なくとも1回は海羅の涙を見ることになる。 「ち、ちょっと!それどーいう意味!?」 「また今度話すよ」 「ねぇっ」 俺は架南の話を無視して電話を切った。
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