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できることなら泣かしたくない。
今日、一緒に通学した海羅の行動は口には出さないものの、きっと淋しいのかもしれない。
俺だって同じ気持ちなんだ。
行かないで
そう言いたい気持ちを海羅はグッと堪えているように見えた。
それは有り難かった。
もし海羅に行かないでって言われたら、俺は行かないと言ってしまいそうで怖かった。
それが分かっているから海羅も言わなかったんだと思う。
俺の事をよく分かってるから……。
誰よりも分かっているから…。
言わなかったんじゃない。
言えなかったんだ。
海羅を連れていけたら良いのに。
イタリアまで連れていけたら良いのに。
そうすれば一緒にいられる。
だけど、海羅には海羅の人生がある。
そんな俺のわがままに付き合わせる事はできない。
俺が海羅に言ってやらなきゃいけないことがある。
それを言うのは正直辛い。
いつの間にか廊下に生徒はほとんどいなくて、講義の開始の合図だけがやけに悲しく鳴り響いていた。
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