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再度至近距離で拓真の顔を見ることになった帝は、今度こそ顔が赤に染まっていくのを感じた。
慌てて下がろうとしたがしかし、その前に拓真に顔を見られてしまい、拓真の目が驚いたように見開かれるのをみた。
「竜宮寺、おまえ・・・」
確かめるように言葉を発する拓真に、なんと答えるべきか、生徒会の書類を処理するとき以上かもしれないスピードで頭を回転させていると、拓真は最後の一言を言い放った。
「そんなに驚いたのかぁ?顔が真っ赤じゃないか」
「・・・は?」
まるで、小さい子供でも見ているような目の拓真に、そんなんじゃないとか、わざわざ言うな、とか、返そうと思っていた言葉が全部引っ込んでいった。
「・・・いや、だいじょうぶ、ですから。ありがとうございました」
「ん、そうか?ならよかった」
「・・・はぁ・・・」
あまりに見当違いなことを言う拓真に、固くなっていた体の力が抜けていくのを感じた。
そして、次の瞬間、帝を見ていた誰もが驚いて目を見開いた。
帝が、力が抜けたように、ほっとしたように笑みをこぼしたのだ。
転入生が来てから、いや、それ以前からめったに見られなかったのに。
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