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何か覚悟を秘めた眼差しでそう言い切った拓真を、雅は見つめていた。
「そう、ですか・・・」
そう言ったきり、黙り込んでしまった雅に、今度は拓真が雅を見つめていた。
暫く考え込んでいた雅は、自分の中で何かの決着が着いたのか、一度頷いて拓真と目を合わせた。
「わかりました。私もあなたに協力させて頂きます」
「へっ?」
雅からの思わぬ提案に、拓真は間の抜けた返事をした。
言葉にしてより心が定まったのか、ひとりでうんうんと頷きながら雅は喋り出した。
「そもそも、私は過去の出来事を知っていたのだから、今回のことも事前に回避できた筈です!にも関わらず、今の状況はあの頃よりも悪いといっても過言ではない。その原因は、たしかに私にもある。ならば、今からでも改善に手を貸すのは当然ですよね!・・・と言うわけで、私に出来ることがあれば何でも言って下さい。もう生徒会の関係者ではありませんが、できうる範囲でお手伝いします」
つらつらと自分の考えを吐き出した雅は、どこか満足げな顔をしていた。
雅の勢いにすっかり気圧された拓真は、ただ、「ああ、たのむ・・・」と答えたのだった。
その後はまた取り留めのない話をして、その日はお開きとなった。
時間もすっかり遅くなってしまい、いい加減に帰らなければと挨拶をして雅が席を立つと、拓真も見送ろうと玄関までついて行った。
「それじゃあ、こんなに遅くまで失礼しました。明日から、宜しくお願いしますね」
おやすみなさい、と挨拶をしてきびすを返そうとした雅は、後ろからの拓真の呼びかけに振り向いた。
「・・・さっきは適当に返事しちまったけど、頼りにしてるからな。・・・またよろしく頼むぜ、雅」
そしておやすみ、と言った拓真はゆっくりとドアを閉めた。
一人その場に残された雅は、再会してから初めての懐かしい呼び方に、顔をほんのりと赤くしながら歩き出した。
「もちろんですよ。・・・拓真」
誰にも聞こえないほどの声で、呟きながら。
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