To return ~閑話休題~

4/4

2627人が本棚に入れています
本棚に追加
/99ページ
何か覚悟を秘めた眼差しでそう言い切った拓真を、雅は見つめていた。 「そう、ですか・・・」 そう言ったきり、黙り込んでしまった雅に、今度は拓真が雅を見つめていた。 暫く考え込んでいた雅は、自分の中で何かの決着が着いたのか、一度頷いて拓真と目を合わせた。 「わかりました。私もあなたに協力させて頂きます」 「へっ?」 雅からの思わぬ提案に、拓真は間の抜けた返事をした。 言葉にしてより心が定まったのか、ひとりでうんうんと頷きながら雅は喋り出した。 「そもそも、私は過去の出来事を知っていたのだから、今回のことも事前に回避できた筈です!にも関わらず、今の状況はあの頃よりも悪いといっても過言ではない。その原因は、たしかに私にもある。ならば、今からでも改善に手を貸すのは当然ですよね!・・・と言うわけで、私に出来ることがあれば何でも言って下さい。もう生徒会の関係者ではありませんが、できうる範囲でお手伝いします」 つらつらと自分の考えを吐き出した雅は、どこか満足げな顔をしていた。 雅の勢いにすっかり気圧された拓真は、ただ、「ああ、たのむ・・・」と答えたのだった。 その後はまた取り留めのない話をして、その日はお開きとなった。 時間もすっかり遅くなってしまい、いい加減に帰らなければと挨拶をして雅が席を立つと、拓真も見送ろうと玄関までついて行った。 「それじゃあ、こんなに遅くまで失礼しました。明日から、宜しくお願いしますね」 おやすみなさい、と挨拶をしてきびすを返そうとした雅は、後ろからの拓真の呼びかけに振り向いた。 「・・・さっきは適当に返事しちまったけど、頼りにしてるからな。・・・またよろしく頼むぜ、雅」 そしておやすみ、と言った拓真はゆっくりとドアを閉めた。 一人その場に残された雅は、再会してから初めての懐かしい呼び方に、顔をほんのりと赤くしながら歩き出した。 「もちろんですよ。・・・拓真」 誰にも聞こえないほどの声で、呟きながら。 _
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2627人が本棚に入れています
本棚に追加