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翌朝、いつもと同じような時間に起床した拓真は、簡単な朝食を食べ終えてスーツに着替えていた。
もっとラフな格好でもいいかと思ったが、勤務初日な上にどの程度着崩していいのかよくわからなかったため、一番考えなくてもいいスーツにしたのだ。
部屋を出て、軽くネクタイを弛めながら歩いていると、前方に見知った後ろ姿を見付けた拓真は足を早めた。
「九条!おはよう」
拓真の声に振り返った雅は、その姿を見て笑みをこぼした。
「おはようございます、かい----っと、あぁ、そうか・・・」
昔の癖で"会長"と呼びそうになってしまい、雅は言葉に詰まってしまった。
それをみた拓真も、あー、と声を漏らして視線を泳がせると、ひとつ頷いてまた雅に声をかけた。
「そうだなぁ、ずっとそう呼んでたもんな。----うん、じゃあいっそのこと、名前で呼び合うか!な、雅!」
にこにこと雅を見るその顔は嬉しそうで、つられて雅も笑顔で承諾した。
「そうですね。・・・では、改めておはようございます、拓真」
少しだけ照れくさそうな雅の顔に拓真は満足そうに笑うと、二人で並んで歩き出したのだった。
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