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観覧車に乗っている間に会話は無く、我が子はキラキラした瞳で景色を眺めていた。
そう、私はこの子のそのキラキラと輝く瞳だけは気に入っている。
例えその顔が醜く、私にも夫にも親類の誰にも似ていなくても、この美しい瞳さえ有れば十分に私の子たりえるのだ。
夫はこの瞳すら醜悪だと言い放つ心の狭い、器の小さな人間だったが、私はこの子の輝く瞳は世に誇れると思っている。
それと同時に、成長するにつれてこの子の美しい瞳が失われるのは、私にとって酷く堪え難い事だ。
この子の瞳が濁ってしまった時、私はどうしたら良いのだろうか……?
我が子を見つめながら浮かんだ疑問に、ゆっくりと答えが影を落とす。
安直で愚かしく、最悪で悪魔の様な最高の答え。
「何が有っても、母さんが守るからね。」
聞こえては居ないだろう呟きと共に、右手を軽く握り返す。
何事かと我が子が振り返るが、暫く見詰めて再び景色に視線を戻した。
私は、『答え』を現実のモノにしなくて良いようにと心から祈っていた。
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