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そんな義元に一真は横目で
冷たい視線を送っていた。
一真がこの場にいるのは
主君を逃がす為に
殿(しんがり)を務めて
壮絶な死を遂げた
関口氏広の代わりであった。
出席を拒否したのだが
義元は大層一真を気に入り
無理矢理軍議に出席させたのだ。
一真の脳裏に氏広の顔が過る。
(こいつ…自分を守るために家来が犠牲になったのを何とも思ってないのか…)
義元を見るかぎり氏広の死を
悲しんでる気配はなかった。
「義元様…氏広殿のことですが」
一真の問いに義元が答える。
「氏広か…良き将であった。天晴れな討ち死にでおじゃる」
「それだけ…ですか?」
「他に何があるのじゃ?」
込み上げる怒りを抑えて
口を噛み締めながら
「いえ…何も…」
と小さな声で返した。
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