動き出した野心

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「報告に聞くと、お主の隊はいち早く撤退し、被害はほとんどないとか…」 元康は無言のまま俯いていた。 「今川は相当な被害が出た。今は駿河城から援軍が来るのを待っている状況じゃ…。援軍が到着するまで敵の砦を攻めてはくれぬか?」 下臣たちの視線が 元康に注がれる。 一真は俯く元康を 哀れんだ目で見ていた。 (要は今川の犠牲をこれ以上増やさない策か…その為に松平家に犠牲になれと…) 元康は頭を挙げると 申し訳なさそうに言った。 「殿…我々も砦を攻めて被害が出ております。明朝出陣は些(いささ)か困難かと…。朝比奈殿と共に出陣し、砦を攻めたほうが良いかと存じ上げます」 元康の言葉に数名の 下臣は頷いた。 一真も元康に賛成だった。 しかし、義元は 「成らぬ成らぬ!一刻も早く砦を攻めるでおじゃる!麿に従えぬのか!?」 と脅してきた。 「申し訳ありませぬ…!この元康…必ず砦を攻略して見せます」 と義元の脅しに屈した元康は 深々と頭を下げた。 それを見た義元は 満足そうに笑った。 「麿に三河武士の強さ見せてみよ!」 「ははー!」 ひれ伏す元康の目は 義元を睨んでいることに 一真は気付いた。 (我慢の武将…か)
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