黄色い線

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しばらくの沈黙の後、俺があえて知らないフリを決め込んだと悟った少女は、さらに語気を荒げる。 「ねえっ!今、あたしの事見えてたでしょ!なんで無視すんのっ」 (見てません見てません) 念仏のように唱えて、残りのコーヒーを一気飲みしていると、俺が待っていた電車が来るアナウンスが流れた。 内心ひどくほっとして、俺は立ち上がると、何食わぬ顔で空の缶を捨てにゴミ箱へ向かう。 穴の中に缶を落として、やってくる電車を待った。 背を向けた少女からの視線が、ちくちく刺さる。きっと、まだ俺を睨んでるに違いない。やがて、空き空きの電車がホームに滑り込んで、俺だけの為に扉を開ける。 (まさか、ついてきたりしないよな) 気が気じゃなかったが、ここで振り向いたら負けのようで、平然と電車に乗り込む。 俺は座席に座ると初めて、不自然にならないように、今までいたホームを見た。 少女はまだそこに立ちすくんでいた。 ほっとしたのも束の間、俺の胸に初めて、少女に対する罪悪感が芽生える。 少女はもう俺を睨んでなんかいなかった。足元に視線を落として、泣き出しそうな顔をして、ただ立っていた。 (俺、もしかして最低な奴・・・?) どんどん遠ざかっていく少女の姿を見ながら、ひたすら自己嫌悪に陥った。 寂しいに決まってる。 誰からも相手にされずに、たった一人で、いつもあのホームにいるのだとしたら。 それからしばらく、あの少女が最後に見せた顔が、頭の中から離れなくて困った。
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